焼肉で食すホルモンの部位、「ハラミ」ですが、それは「横隔膜」という器官です。しかしながら、それがどういう特徴があるのか、そもそも横隔膜って何?という疑問はございませんか?
そんな、「ハラミ」についてですが、これから横隔膜について述べ、さらに雑学などを交えてハラミのお話をします。横隔膜が何なのか、どんな特徴があるのか、それがわかればよりハラミの魅力を知ることができるはずです。
1. 横隔膜のはたらきをくわしくご説明
そもそも、横隔膜は、ほ乳類だけが持つ、肺を動かすための器官です。
ニワトリやスズメ、カラスなどの鳥類は気嚢(きのう)という器官で、トカゲやワニなどの爬虫類や、カエルなどの両生類は腹筋などで肺を動かしますが、そもそも肺がない両生類もいます。肺がない生体は皮膚呼吸で酸素を取り入れます。魚類はえら呼吸です。
横隔膜は、より大きく肺を動かすための器官であり、そのおかげでほ乳類はより多く酸素を体内に取り込み、より大きな運動量を可能としています。そのため、横隔膜は非常に重要な器官です。
一般的に、牛の横隔膜を「ハラミ」、豚の横隔膜は「豚ハラミ」と区別されて呼ばれます。
横隔膜は肺を動かすための「筋肉」です。名称は「膜」ですが、実際は「筋肉」です。胴体のほぼ真ん中に位置し、ドームのような形をした「膜」状の「筋肉」で、胴体を肺のある「胸部」と、腸などその他の臓器のある「腹部」に分けています。
血管や食道などを通す穴があいている以外は胴体内部での上下は横隔膜によってしっかり隔たれています。
肺そのものは実は自力で膨らんだり縮んだりできないため、横隔膜が収縮することで肺が下に引っ張られ、まるで注射器のピストンのように空気を肺に入れます。主に横隔膜が肺をそのように動かすのですが、肋骨まわりの筋肉や腹筋もその動きをサポートします。
食品製造業の世界では、ハラミは解体する際、肺にくっついているため、その様子から「ホルモン」の種類のひとつとされています。
しかしながらここで注意したい点があります。内臓は心臓を除いて「平滑筋」に分類されます。分かりやすい例を出すと、胃や腸がそれにあたります。「平滑筋」は「不随意筋」に分類され、自分の意思では動かせない筋肉です。
しかしながら、横隔膜は「横紋(おうもん)筋」です。「横紋筋」は「随意筋」であり、いわゆる「骨格筋」のように自分の意思で動かすことができる筋肉です。つまり、腕や胸、背中の筋肉と同じ種類に分類される筋肉なのです。
内臓に分類されてはいますが、ハラミ自体は、その組成に着目した場合は、いわゆるカルビやロース、バラなどと同じ種類の肉になります。
このままでは話がややこしくなるので、一度整理します。
焼肉などでは、ハラミはホルモンの仲間となります。いわゆるカルビなどの赤身肉とは「違う」種類になります。
しかしながら、「筋肉の種類」としては骨格筋と同じ種類の筋肉であると理解していただきたいと思います。
このことから、ハラミという部位は、ホルモンの一種ですが、その組成がホルモンの中では特殊な部位なのです。
ですので、食感が赤身肉に近いものとなるのは当然なのです。
人に聞かれたら、「内臓」と答えていただきたいのですが、実は赤身肉と同じ種類の筋肉であると、ご自身では理解しているとよいかと思います。「ちょっと変わった内臓」であると理解するとよいかもしれませんね。
ちなみにしゃっくりというのは、横隔膜が痙攣している状態です。
2. 食材としてのハラミについて
食材の話題からずいぶん離れてしまったので、その部位がどのようなものなのかについて、別の切り口から説明します。
ロースやカルビなどと比べると、やはり有名さに欠けますが、今やどこの焼肉店でも基本的にメニューに載っていますし、ハラミという部位自体の知名度は数十年前と比べたらだいぶ上がってはいます。
しかしながら、ロースやカルビのような赤身だと思われることもしばしば見受けられます。食感がどうしても赤身に近い(といいますか、前述したとおり、本当は赤身と同じ組成の筋肉なのですが)のでそういう認識になりがちですが、前述したとおり、横隔膜は肺にくっついている器官であるという理由から、焼肉屋では赤身肉とは違う、ホルモン(内臓)として扱われています。
このあたりを正しく理解できていれば一般的にハラミは内臓と回答できますし、実は赤身と同じ種類の筋肉だから食感が赤身のようであると説明できます。
ハラミはしばしば、サガリとハラミという名称で分類される場合があります。と言いますのは、サガリは横隔膜の上の部分で、ハラミは腹部の横隔膜の部分となっていて、その観点からそれらを区別する場合がありますので、おぼえておくと便利です。しかしながら、とくに区別せずに両者をハラミとして扱われていることもあるのでそれほど明確に分類することもそうそうないという実情ではあります。
ハラミは肺を動かす横隔膜という筋肉であるため、常に活発に動かなければならない器官です。そのため、非常に「鍛えられた」筋肉です。それゆえ、弾力があり、余計な脂肪がつきづらく、気になるカロリーはそこまで多くない部位ですし、良質なたんぱく質で形成されている部位でもあります。肉の旨み、食感を存分に味わえ、しかもヘルシーというとてもすばらしい部位ですね。
しかしながら、ハラミはその性質上、どうしても、1頭の牛や豚からたくさん採れるわけではない部位です。横隔膜自体はそれほど大きくない器官ですので、せいぜい1頭から2~3kgしかとれません。豚にいたっては、1頭から400~500gしかとれないという貴重さです。
美味しくて健康的で、しかも希少なので、ハラミはどうしても人気があり、しかもホルモンの中では高価な部位に位置づけられます。
3. ハラミの呼びかたあれこれ
ハラミという部位は、「サガリ」とも呼称されることは前述しましたが、ハラミをサガリと表現する場合は以下のような場合もありますのでそれについて触れたいと思います。
北海道や東北地方においては、ハラミは「サガリ」と称されます。北海道では焼肉の定番として親しまれています。横隔膜はそれほど人気のある部位ということです。
また、北海道には「牛サガリ」ならぬ「豚サガリ」があります。豚のハラミと同じ部位を指します。豚サガリ発祥の地(上富良野町)では、これを焼肉のメインとしている家庭も多いのです。その希少価値は前述した豚ハラミと同様で、とても重宝されています。このように、横隔膜、つまりサガリは北海道の焼肉に欠かすことのできない部位です。北海道ではハラミはサガリとして、重宝され人気のある部位なのです。
4. 食べ方に注意が必要
ハラミの調理方法は、ただ焼くだけに留まりません。もちろん焼肉としても人気がある部位なのですが、焼くにしてもその調理法、料理はバリエーションがあります。
たとえば、ハラミの串焼き。脂と肉汁が十分に落ちますし、その切り方により、ハラミの歯ごたえ、食感を十二分に堪能できます。
もちろん肉なので、細かく切って炒め物に使ってもいいのです。ずいぶん豪華な炒め料理ではありますが、旨くないわけがありません。味噌炒めにしても十分過ぎるほど美味しいおかずになります。
タレに漬け込むと、臭みを気にせずに食べられます。
そして、ハラミは煮ても美味しい部位なのです。この場合は主に豚ハラミを使うことが多いのですが、煮たハラミも美味しいのです。大根と一緒に煮込むと、大根がハラミの旨みを吸い、さらに美味しいおかずとなります。ハラミ自身も、煮るとまた違った食感となります。
しかしながらハラミ、つまり横隔膜は非常に「鍛えられた」筋肉なので、そのまま焼いて食べるとなると、固いという欠点があります。
もちろんその弾力を楽しむ食し方もありなのですが、ご自宅でそのままハラミを焼くと固すぎると思われる方もいます。
それを防ぐために、すじを包丁などで切る(すじ切り)か叩いてやわらかくする方法があります。
ひと手間にはなりますがそれで食べやすくなります。
更にご注意いただきたい点があります。焼肉として、ご自宅で食べるならば、「網焼き」を強くおすすめします。肉汁が臭みとなり、その臭みが味わいの邪魔になります。ですので、焼肉店のように、網で焼いて余計な肉汁をおとします。そうすれば、美味しく食すことができます。
おわりに
ハラミについて、人それぞれのイメージはあるのかとは思いますが、ハラミ、つまり横隔膜は牛や豚のどこにある部位なのか、それがどんな器官なのか、そのあたりをいざ聞かれたときにすらすらと答えることができたならば、十分な話のネタにできるのではないでしょうか?
あまり専門的なことを話しても小難しい話になるのかもしれませんが、すらすら説明できたならば一目おかれるかもしれませんね。