イベリコ豚ときいて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?ふつうの豚肉よりちょっと高級そう、お洒落なバルやスペイン料理屋さんにあるイメージ、など様々なイメージがあるかと思いますが、具体的にどのようなお肉のことを指すのかわかる方は意外と少ないと思います。
そこで今回は、イベリコ豚とはどのようなお肉で、どのような食べ方があるのかをご紹介していきます。
1. イベリコ豚とは?
イベリコ豚の原種はイベリアという種類の黒豚であるといわれており、イベリア種100%純血の豚、またはイベリア種とデュロック種を交配させた豚(イベリア種50%以上)のうち、スペイン政府が認証したもののことをさすとされています。起源は地中海地方にあり、主にイベリア半島の中央部から南部、スペイン西部からポルトガル東部にかけて数多く見られます。
もともとは、5000年以上も前からスペインにいた野生の豚で、猪に近く真っ黒の体と踵が特徴の豚です。このことから、スペイン語では「黒い脚(pata negra)」とよばれることもあります。
2. イベリコ豚の飼育方法
イベリコ豚の飼育は大きく3段階に分けられます。
第1段階は、哺乳期間といわれる生後2か月までのミルクで育てられる期間です。
第2段階は、予備飼育といわれる離乳から体重80kg~110kg位になるまでの期間です。樫やコルク樫の森で、天然穀物飼料、牧草、種子、草の根などを余分に与えすぎないようコントロールしながら運動をさせて太らせず、骨を強化します。
第3段階は、肥育期間またはモンタネーラと呼ばれる放牧期間です。一般的に10月~2月くらいまで続きどんぐりや牧草、球根食物などを食べて十分に運動させます。1日平均8kgのどんぐりをたべて栄養をどんどん貯えさせます。モンタネーラを終え、放牧前と比べ体重が50%以上増えたものが後に説明するベジョータ、そうでないものがレセボになります。
3. イベリコ豚の種類
イベリコ豚は与えられた飼料、血統、飼育方法、増加体重などから3つにランク付けされます。グレードの高い順から、ベジョート、レセボ、セボに分けられます。
①ベジョータとは
イベリコ豚の中で一番グレードが高く、肉質・脂肪が最もよく、世界的に有名な「どんぐりを食べて育ったイベリコ豚」は、ベジョータのことをさします。餌となる樫の木の実がなる時期の関係で、7~8月ごろに生まれた豚のうち、モンタネーラを経て約160kg以上に育ったもののことです。
②レセボとは
肉質の決め手となるどんぐりや牧草、木の根などを食べているため、ベジョータに次ぐ品質といわれます。モンタネーラ期間中に既定の体重まで達しなかったため、その後、穀物飼料を与えられて育ったものをさします。
③セボとは
血統的にはイベリコ豚の品種ですが、どんぐりなどの独特の飼養方法を行わず出荷重量になるまで穀物飼料を与えて育てられたイベリコ豚です。
4. イベリコ豚の肉質とおいしい効果
イベリコ豚は、モンタネーラ期間に自由に動き回り、オレイン酸を豊富に含むドングリや草の根を食べるという独特の飼育方法から、ほかの豚にはない様々な成分を含んでいます。
たとえば、オレイン酸やビタミンB群、ビタミンE、抗酸化物質などが豊富に含まれています。中でもオレイン酸は、動脈硬化や高血圧の要望に効果があるとして注目を集めている体に良い脂です。スペインのイベリコ豚を昔から食べている地域の人に心臓疾患が起こる人が少ないのはこのイベリコ豚のおかげかもしれません。
また、広い牧草地を歩き回りながらどんぐりを探しているのでマイ西適度な運動量があり、筋繊維の中に細かい脂肪が入り込むことで霜降り状の上質な豚肉になります。一般的な豚肉は脂肪の溶ける温度が36度前後であるのに対し、イベリコ豚は20度前後で溶け始めます。これが肉質がさらりとしていながらも甘みのある脂身をもった肉質につながっています。
5. すべて味わい尽くしたい!イベリコ豚の部位
一口にイベリコ豚といっても、いろいろな部位があり、部位によって味わいも様々です。今回は特徴的な部位をいくつかみていきます。
①大トロカルビ(スペイン語:セクレト)
1頭から600g程度しかとれない希少部位です。あまりの美味しさに、スペインの職人が内緒で家に持ち帰って食べていたというエピソードからスペイン語で秘密(セクレト)と名付けられるほど、非常に美味しい部位といわれています。肉本来のもつ旨みを味わうために炭火の網焼きで岩塩などをつけて食べるのが一番おすすめの食べ方です。
②ロース(スペイン語:ロモ)
イベリコ豚の中でも最上級部位です。脂身がなくあっさりした風味です。スペインでは、ロースを丸ごと熟成させるロモ・イベリコという生ハムがありますが、精肉ではステーキやしゃぶしゃぶとして使用してもとてもおいしく食べられます。
③スペアリブ(スペイン語:コスティーヤ)
骨付きのバラ肉です。日本の豚とは違いお肉が少ないことに特徴があります。ジューシーな味わいで骨の部分に濃厚なうまみが凝縮されているので、それがお肉に浸透することでほかの部位とはまた別の美味しさを楽しむことができます。日本でもよく食べられる漬け込んで焼いて食べる調理法で、ガツンとした旨みを味わうことができます。
④トントロ(スペイン語:ファルソ・セクレト)
イベリコ豚は綺麗にサシの入った霜降りを特徴としていますが、中でもトントロは見事にちりばめられた霜降りが最大の特徴です。コリコリとした食感と、かみしめるごとに溢れ出る肉汁は一度食べたら病みつきになること間違いなし!イベリコ豚の首の部位にあたりますが、1頭から約200gしかとれない希少部位です。
おわりに
いかがでしたか?今回はイベリコ豚の特徴や部位などについてご紹介しました。いイベリコ豚とはどんなものかを知ったうえで味わえば、より一層おいしく頂けますよね。
イベリコ豚にもたくさんの部位がありますが、いろいろ食べ比べをして自分にとってベストなイベリコ豚を探すのも楽しいですね。日本の豚とはまた違った魅力を持つイベリコ豚をお店でも家でももっと食べてみましょう!