九州のやきとり屋台で初めて「サガリ」というメニューを知りました。サガリの串は、他の串よりも値段が高めだったように記憶しています。「美味しいですよ。」と促されて注文すると、やきとりのように串に刺さった牛肉が出てきました。
牛の「サガリ」と呼ばれる部位なのだそうです。焼肉屋さんでも見たことがないように思うのですが…
牛の「サガリ」って知っていますか?
1. サガリって牛のどの部位?
牛の「サガリ」という名前は、“ぶら下がり”から来ていると言われています。牛の横隔膜からぶら下がって肺を支えているのがサガリです。内臓肉ですが見た目は赤身で、味も赤身肉に似ている柔らかいお肉です。
サガリはハンギングテンダー(hanging tender)とも呼ばれます。ハンギング(Hanging)には“吊るす”という意味があり、テンダー(tender)には“柔らかい”という意味があります。“吊り下がっている柔らかいお肉”ということになるでしょうか。
レストランなどにある“ハンギングテンダー“や“ハンガーステーキ“というメニューはこのサガリを使用したステーキです。内臓肉のステーキだったのですね。ちょっと驚きです。
関東ではサガリという呼び名が使われることが少なく、サガリはハラミとして提供されることが多いそうです。一方、九州ではハラミよりサガリの方が認知度が高く、北海道ではハラミをサガリと呼ぶのだそうです。
なんだかややこしいですね。
2. 「サガリ」と「ハラミ」は同じだけど同じじゃない?
「ハラミ」は“腹身”で、お腹の身です。具体的には胸とお腹の境にある横隔膜の辺りを指します。
横隔膜の部位は、下側のぶら下がっている丸みを帯びて分厚い形をしたところと、背中側の薄くて細長い形のところとのふたつに分けることができます。
「サガリ」になるか「ハラミ」になるかというのは、このふたつをそれぞれどう呼ぶかという問題になるのですが…
全体を「ハラミ」と呼び、そのうちの背中側を「カクマク」、肋骨側の分厚い部分を「サガリ」とする分け方と、「カクマク」にあたるところを「ハラミ」、肋骨側を「サガリ」とする分け方の2種類あるようです。
「カクマク」と「サガリ」に分ける分け方で言えば、「ハラミ」=「カクマク」+「サガリ」
サガリはハラミの一部で「サガリ」=「ハラミ」となります。
「カクマク」にあたるところを「ハラミ」、肋骨側を「サガリ」とした分け方ではサガリとハラミは別の部位ということになり、「サガリ」=「ハラミ」とはなりません。
「サガリ」は「ハラミ」になる場合もあるしならない場合もある。「サガリ」=「ハラミ」の場合でも、サガリはハラミだけれどハラミが全てサガリにはならない。
分け方からして曖昧でややこしいのですが、「サガリ」と「ハラミ」をあえて分けて考えるときは、肋骨側を「サガリ」、背中側の「カクマク」にあたるところを「ハラミ」として区別するのが一般的で分かりやすいようです。
3. 「サガリ」と「ハラミ」呼び名の違いは地域による?お店による?
一般に、九州ではサガリの部位はサガリとして、ハラミと区別されるようですが、関東ではサガリを含めて全体をハラミとしていることが多く、北海道では逆に、全体をサガリと呼ぶ傾向があるようです。
一方で、サガリとハラミの違いは地域によってはっきり分けられているかというとそうでもなく、同じ地域でもお店によって様々です。
例えば同じ東京にある焼肉屋さんでも、サガリにあたる部位もハラミとしてメニューに載せているお店もあれば、サガリはサガリとして載せているお店もあります。サガリを「並ハラミ」、ハラミを「上ハラミ」としている焼肉屋さんもあるようです。
4. 「サガリ」と「ハラミ」味の違いは?
お店によってサガリがハラミだったり、ハラミがサガリだったりと、どっちがどっちやらややこしいサガリとハラミですが、そもそも味に違いはあるのでしょうか?
カットされた状態ではサガリとハラミの見た目はほぼ同じです。
どちらも柔らかくて内臓特有の臭みなどもほとんどなく、いわゆる普通のお肉のように食べられるのが特徴です。
サガリは霜降りになることが少なくハラミよりも硬めであるのに対して、ハラミの方が若干脂の量が多く旨味があって濃厚な味わいがあると言われますが、その差はわからない程度とも言われています。
5. 「サガリ」と「ハラミ」どっちがより低カロリー?
ハラミはカルビに似ているけれどカルビよりもカロリーが低いとして、ダイエットの焼肉メニューとして人気があるようです。
サガリもハラミとして提供している焼肉屋さんが多いようですが、サガリとハラミが別メニューとしてあったとき、どちらを選んだらより低カロリーになるでしょうか?
100gあたりのカロリーで比較すると
サガリ355kcal
ハラミ 414kcal
サガリの方がハラミよりも低カロリーです。
サガリがメニューにない場合には、サガリが「並ハラミ」、ハラミが「上ハラミ」として区別されていることもあります。この場合は“上”よりも“並”のハラミを選んだ方がカロリーは低いと言えそうです。
価格も一般的にサガリの方が低いようです。サガリは低カロリーでしかも低価格というのは嬉しいですね。
おわりに
サガリがハラミとして売られていることもあれば、ハラミがサガリとして売られていることもあるということ。自分がこれまで食べてきた“サガリ”や“ハラミ”は果たしてどちらだったのでしょう?
北海道で食べたサガリはハラミだったかもしれません。それ以外の地域ではハラミがサガリだった可能性はあっても、サガリはサガリだったと考えてよいのかもしれません。
サガリをハラミときちんと区別して味わいたいと思うときは、お肉屋さんに「そのサガリは横隔膜からぶら下がって肺を支えている部位ですか?」「背骨側の薄くて細長い部位ではないですね?」などと、嫌がられるのを覚悟した上で確認してから買う必要がありそうです。
個人的には、サガリでもハラミでも美味しければどちらでも満足ですが…